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2006/5/1


「先輩、なんだか大学に入ってから、
     エロゲーの時間が長くなってませんか?」

「ううっ……! そ、そんなことはない」

「嘘だっ! 昼間に原稿も書かずに虚ろな目で体験版を
     あさっていた奴は誰だっ!!

「いやいや、PCをバージョンアップしたお陰で、今までの
      ロースペックPCではプレイできなくなったエロゲが
      できるようになったのはありがたいことだ」

「先輩……堕落ですよ……」

「……小林よ、俺だってお前ぐらいの頃は、大学生のGWというのは
      女の子と一日中家でパヤパヤしてるものだと思っていた

「一体何のマンガですかそれは……」

だが現実はどうか! 俺は死んだ魚の目をしてエロゲーの
      体験版をあさる毎日……一体、どこをどう間違ってしまったと
      いうのだ……

「先輩、そういえば先週のクラスコンパ、どうだったんですか?」

「毒男4人で固まって、AV女優の話しながら肉食ってた」(ガチで実話)

「うっわ……」

「いや、まぁ席の並びっていうのは偶然によるものが多いし、
      だいいちうちのクラスってギャル系多いし、別にその時は
      全然構わなかったんだよ」

「その後問題があったと?」

「その後、毒男4人を代表して俺が女の子を二次会に誘ったのだ。
      『この後みんなでカラオケ行くんだけど、どう?』って」

「まぁ二次会で誘う、というのが妥当ですが……」

「そしたら、『とにかくダメなものはダメなんで……他の人、
      当たってくれます?』
だって」

「ツンですね……」

『ダメなものはダメ』ですよ小林さん。彼女は確かにツンだが、
      デレる事はまず無いと思っていいよ……

「その後どうしたんですか?」

「所沢の繁華街を一人で歩き回り、ブックオフで買い物して帰った」

「素直に帰ればいいものを……」

「とりあえず繁華街の空気だけでも吸っておかなければ気が済まん

「先輩、どうもダメですね……毒男坂はあまりに長いです」

「ううっ……俺は今日の今日まで色々頑張ってきたハズだったのだ。
      しかし、この仕打ちは一体どういうことか!?

「もう自分だけではよく原因がわかりませんね」

「もしかして、モテないのに理由って無いんじゃないか」

「出た、トンデモ理論……」

「そうだろう! 顔が悪くても女回りの良い奴は多い、性格が悪いのは
      人間なら不可避
だ。空気を読む事だって少しは覚えた筈だし、
      ファッションだって改善した筈なのだ、それで、それでコレか……!

「外見の悪い人の中身を否定したら、何も残りませんよね……」

やっぱりこれは天罰か何かだ。俺の前世は、きっと満州で
      婦女子に乱暴の限りを尽くした奴とかそういうのに違いない」

「科学的じゃないですね、もう少し研究してもいいでしょう」

「どだい無理な話だ……これ以上となると、もはや自力では
      どうしようもない。
前世の行いが悪かった、これしかない」

「サジ投げた……」

その後起動したエロゲーのなんと温かかったことか!
      こんなに感動したのは初プレイの時以来かもしれん」

「なんていうか、帰る所はそこにあるんですかねぇ

「俺は思ったよ……ああ、この娘達は誘いを無下にすることはないし、
      約束は破らないし、ドタキャンとかしない
んだな……と」

「一体どれだけ痛い目を見てきてるんですかアンタは」

「俺とてただの女性恐怖症で二次元に走っているワケではない。
      ただ、俺は許せんのだ……不実というものがな!

「ちょっと待って下さい先輩、先輩だって誘いは全部受けないでしょ」

「ああ、まぁ……知人がゲーセンとか誘ってきても、めんどくさいから
      用事があるとかいってごまかす
ことはよくあるな」

「やっぱり、しっぺ返しがこういう所で来てるんじゃないですかね」

「ううむ……やはり女が不実なのは、俺が不実だからなのか」

「おそるべし、因果パワー……」

「だけどなぁ、小林。よくよく考えてみれば不実な奴だって
      イケイケの奴はイケイケ
なんだぜ」

「とどのつまりは、やはり先輩の非モテは因果の果てにあると?」

まだ科学の範疇の及ばない所に、非モテの気というのがあるのだ」

「それで、エロゲーの時間が延びた、と」

「なんだろうな……男子校時代に抱いていた三次元女への
     幻想というのが日に日に剥がれて行く
ようだよ」

大学に入ってから二次元逃避が激しくなるって、なんだかなぁ」

「別に二次元に愛を求めてるわけじゃない。ただ、人生において
      欠乏しているハッピーエンドっていうのを、補完したいだけ
なのだ」

「サプリメントですね」

「それはあたかも……そうだな、俺達が普段見下している人間が、
      ドラマの話題に夢中になるのと同じ事なのだ。人間はみな、
      なんらかの方法でハッピーエンドを補完する生き物
なのだ」

「なんかまた変な方向に行ってる……」

お互いが疑心暗鬼になることもなく、芽生えるお互いの不実の心に
      狂わされることもなく、ひたすら架空に甘やかされる事
というのが
      どれだけ心地いいかということだよ。第二の寝床ですよ

「第二の寝床……」

「しかし、架空の世界が終われば人はみな、また疑心暗鬼の世界に
      戻って、恨んだり恨まれたり悲しんだりするのだ。人類文明の歴史、
      まだ一万年だって経過しちゃいないのだ。
人類は未だ原始人

非モテ論だけでそこまで論理が飛躍するのも珍しい」

「つまり、今は蔑みの対象であるエロゲーというのは、実は来る
      輝かしい人類の未来を示してくれるビジョンなのだ!

「なっ……!」

「これが足がかりとなって、人間は幸福な時代に向かうのだ。
      インテリがえてして非モテでオタクなのは、この幸福な未来を
      構築する為に、あえてそう仕込まれている
んだよ!!」

ナ ナンダッテー!!
 Ω ΩΩ


「つまり、新たな文明を構築し、下らない差別排斥の社会を破壊する
      存在というのは、我々のような人間だということなのだ

「す、すごい自己肯定だ……」

「いつかやってくるさ。キモい奴もイケてる奴も、みな平等に幸福を
      分かち合える、美しい時代がな……その時、階級闘争も戦争も
      無くなる。未来は毒男にゆだねられているんだ」

「で、とりあえず先輩はどうするんですか?」

「エロゲーを頑張る」

「ダメだこりゃ……」



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