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2006/4/29


ゴールデンウィーク初日のPM13:00――場所は東京郊外の某スタジオ


「オハヨーゴザイマース」

「遅いぞナカジマ、10分の遅刻じゃないか」

「すまん、ちょっと降りた駅でお腹の具合が……」

「全く……副隊長を見てみろ! かれこれ6時間前に到着してるんだぞ」

「zzz...」

「……寝てるけどな」

・・・

「とりあえずもう一度確認しておくが、今回は来る同人誌即売会、
    『夢の中の庭師』に向けて製作するCD-ROMに収録する、
    『薔薇水晶改造計画』の英訳バージョンの録音だ」

「説明台詞ご苦労さん、それじゃあチャッチャとはじめようか」

「ヨシ、それじゃあ本番5秒前……4……3……」



「Project tune up Barasuisyo...」(うらごえ)

「さあ、死ぬのよ! 死ね、さっさと死ね! あんたさえこの世から
     いなくなれば……」

「カットカット! 副隊長、いきなり台本に無い事言わないで下さい

「え、でも台本にはこういうふうに……」





「それは台本じゃあないっっ!!」

「これは巷で話題のキモイ系ヘヴィライトノベル誌こと
    『ファントム』じゃないですか。買ってたんですか?」

「うむ、今最もアツい次世代オタクの旗手、本田先生の出した
    雑誌ともなれば、やはり同様に次世代オタクの旗手を目指したい
    我々としては買うしかないだろう」

「いやいや中々面白そうな小説ですな……(超速読)……
    なるほど、面白い! 俺はラノベは嫌いですが、本田先生の
    『Innocent World』はなんだかどんどん読み進めてしまいますよ

「喪男の心がシンクロしたな……」

カットカット! 小説を読んでる場合じゃあないっっ!!

・・・

――30分経過



「とーくいっと ふろむ いーじー! せい、 "にゃ" あふたー……」

「カット! TalkじゃなくてTakeだよ!!」

「むぅ……台本の字が読みにくい」

「いいわけしない……はい、もう一回頭から!」


・・・

「おい山田、薔薇水晶は『Sun of a bitch!!』なんて言わないだろ」

「台本を書いたのはナカジマですよ」

「あんまり直訳ばっかりだと面白くないし、ちょっとしたアクセントだよ」

「全く、さっきからNGばかり出して……早くしないとご近所さんに
    気づかれてしまう
じゃないか」

「そう、このスタジオの名前は『自宅』……」

Oh,Yes!! good!! gooood!! なんて、何度もやり直してたら
    ご近所さんがめちゃくちゃ怪しむじゃないか」

「あんまりムチの音とかさせたら、中の人が変態だと思われてしまう」

「まぁ『思われる』というより『バレる』といった方が正解……」

「ムチ? そんなの持ってたか?」

「ジーパンのベルトを使って、こう……わっかを作って、
     両端を思いっきり引っ張ると……」

パシィン! パシィン!!

「この通り、ムチの効果音できあがりですよ」

「おおっ! 単なるムダ知識だと思っていたが、まさか
     こんな場面で使う事になろうとは
……」

「なんか昔ながらの貧乏な製作現場みたいだな……」

・・・

「しーだすんと ろーず えにわん。しーいず ぐれいてすと……」

「カーット! "lose"の発音は「ろーず」じゃなくて「るーず」だ!

「だはっ! やっちまった……もうあと3行ってトコロだったのに」

「全く、Take23行くぞ。また頭からね」

「おいおい、もうノドが痛いよ。大体、どうしていつも頭からやるんだ?
    なんか編集して場面ごとに繋ぐ機能は無いのかよ」

「……俺、機械弱いからさ、そういうのよくわからないんだよ」




工工エエェェ(´Д`)ェェエエ工工



・・・

「エート、『音声編集』でググッてと……よし、これか……」

「ゲホッ……もう声が出ないし、流石に恥ずかしくてかなわんよ

女の声と男の声の使い分けは難しいぞ」

「だからナカジマが薔薇水晶役で、副隊長が白崎&エンジュ役なんですよ」

「……中の人は一人ですヨ」

「一瞬、白崎が女声になったり薔薇水晶の声が野太くなったりするが、
     そこはもうご愛嬌としか」

「このポンコツなクオリティが笑いのツボを刺激するか、それとも
    逆鱗に触れるか
によりますよね」

内村プロデュース見て笑える人とかなら許してくれそうかな」


・・・

「よし、まぁこんなもんだろう! お疲れ様でした!!」

「「おつかれさまでしたー」」


「腹減ったよ。もう5時なんだからそろそろメシの準備をしようぜ」

「ああ、そうだな……」

「山田、今日の料理は?」

「のどごしが良いのを頼む。今はのどをいたわりたい」

「今日は鶏肉が安かったからチキンカレーです」


工工エエェェ(´Д`)ェェエエ工工




・・・

きょうのこんだて

・チキンカレー

・焼きピーマン

・チルド餃子

「餃子は適当に調理すればいいし、ピーマンはレンジのグリルで
     15分間放置しておけばいい。問題はカレーだな」

「おい山田、いつもチャーハンばかりのお前が本当にカレーなんて
     作れるのか?」

「うるせー! 『得意料理:卵かけごはん』のお前に言われる筋合いは無い。
     これでも料理に関しては心得があるつもりなんだぞ」



チキンカレー山田風の材料

・キャベツ1/2

・鶏の手羽先500g

・にんじん1本

・カレールー半箱



「たまねぎは?」

「副隊長はネギ類好きじゃないから、入れてない」

「にらなら食べられるんだが……まぁ、煮込めば食えるが、
     切ってる時にニオイが充満されては困る」

「ところで、ちょっとナベの大きさと比べて具の量が多くないか?

「大丈夫大丈夫、キャベツはすぐに縮むからこんなもんだよ」



・・・

(数分後)

「うわっち! うわっち! キャベツが鍋から溢れそうだ!!」

「いわんこっちゃない!」

「今晩メシぬきかな……」



・・・



「な、なんとか出来上がったが……」

「なんかルー入れる前のカレーの煮汁が黒ずんでたんだけど、
     ホントに食える味なのかこれは?」

「多分……ていうか、煮汁が黒くなるなんてマンガの話だと思ってたけど、
    ヘンな調理すると
ホントに黒くなるんだな……」

「……誰から先に食べるんだ?」

「俺は作った奴に責任があると思うが」

「何を言う! 普段俺ばかりが料理をしているんだから、
    食べるだけ……いわば、食べる専門の副隊長かお前が食えば良いだろ」

「副隊長ッ、まだ若い僕達に未来を託してください!

「年功序列だ!」

「山田!」

「ナカジマ!」

「こうなっては埒があかん。ここはひとつ平等にジャンケンで決めよう」

「わかりました。うらみっこなしですよ?」



「「さいしょーは……」」




「「パー!」」 「グー! ッてえぇェエええ!?



「そんなのアリかよ!!」

「お前、軍のメシを何年食ってるんだ……?」

「チクショウ! わかったよ、食えば良いんだろっ!!?




「……ングング……」

「どうだ?」

「……意外と食えるぞコレ」

黒い煮汁はどうやら杞憂だったようだな」

「そうとわかれば一安心。それじゃあみんなで食べましょうか」


・・・

「うん……うまい。でも、一番うまいのは焼きピーマンかな」

「レンジで焼いただけのモノに負けた……」

「それにしてもアレだなぁ、山田」

「うん?」

「楽しいGWの頭に、恥ずかしい録音やって、黒い煮汁のカレー食って、
    
一体俺達は何をしているんだろうな……

「………ッッッ!!」

「何も言うなナカジマ、何も……何もな」



・・・

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