「一体何の気の迷いですか？」

「いやまぁ、ミクシィに飽きただけだよね」

「なんですかそりゃ……」

***

「まぁやはりエンターテイナーにミクシィは狭過ぎるということだよ」

「と、いうと？」

「なんで『大事なマイミクさん☆』の機嫌を伺って、リア充臭い
　　　　　　つまんねー日記を書かなきゃいけないんだよ」

「そんなの、日記書いてから新着コメントを１５分おきぐらいに
　　　　　チェックしてた人に言われたくないですよ」

「日記ってのは、もっと殺伐としてるべきなんだよ」

「一体いつのテキストサイトですかそれは……」

「ネットという匿名空間を活かして、世の中の不条理と残酷に
　　　　　　本気で怒り、だだをこねられるのはテキストサイトだけ！！」

「単に鬱日記を知り合いに見られるのがイヤなんでしょ？」

「山本……もはや現代において、弱音や泣き言というものは
　　　　　　仮面をかぶらなければこぼす事ができないものなのだ」

「僕は小林ですよ、先輩」

「久しぶりだったからついつい。まぁとりあえず、今俺は
　　　　　　イイこと言ったよな？」

「まぁミクシィで鬱日記を更新したって、皆は皆で手前の事で
　　　　　精一杯なわけですから、鬱陶しいだけですよね」

「『構ってちゃん』を演じて、甘やかされた所でそれは何の解決にも
　　　　　　なりはしないのだ……苦しい時、悲しい時、やりきれない気持ちを
　　　　　　救えるのは自分自身だけということを忘れてはいかん」

「まぁそうすると、恋人とか友達とかの存在ってどうなんだって
　　　　　思いますけどね……」

「所詮人間なんて利害の一致・不一致じゃないか小林君。
　　　　　　人は独りぼっちだよ。弱い部分を誰かに依存しようなんて
　　　　　考えていたら痛い目を見るばかりじゃないか」

「あんたコント休んでる間に何があったんだ……」

「もう俺は恋人だっていらないよ。セックルして何が癒されるって
　　　　　　言うんだ？ 恋人なんて、できたらできたでまた新たな戦いに
　　　　　　巻き込まれるだけなんだぞ」

「できてもいない人が何を言ってるんだか……」

「恋人云々で浮かれてる奴とかマジで憐れだと思うね。
　　　　　　あいつら幸せぶってるだけじゃん。
　　　　　　自分の苦しさとか葛藤とか、そういうのを誤魔化して
　　　　　　必死な顔して『幸せです』って言ってるんだよ」

「あんたまだ恋人欲しいでしょ」

「べ、別に欲しくなんて無いんだからねっ！！」

「……今夜は飲みましょうよ」

「うん……」

「まぁ生きてりゃ悪い事ばっかりでもないでしょ」

「中の人は同じなのに、何故かその言葉に心安らいでしまうな」

「いやまぁ、アレですよね。『僕の最高の友人は僕自身』って
　　　　　やつですよね」

「さんざんリア充生活を続けて、結論がソレかよって感じだよな」