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2006/5/10

「そんでさー、ヒデとクミの二人が来週どうなるのかっていうのと、
      残されたタクオの運命はって感じじゃん?」

「うんうん、気になる気になる! でもさー、タクオってちょっと
      ネクラっていうか……アキバ系っていうの? あれじゃちょっと
      イタダケナイよねー」

「はははっ! ちょっとタクオはマジで問題外って感じだけど、
      なんかこう、捨て猫とかほっとけない俺としてはタクオも
      どうにかならねーかなとか思っちゃうワケよ」

「あははっ、慶治君やさしーっ(笑)」



・・・

「……先輩、起きてくださいよ。学校に遅れますよ」

「……ハッ、何!? 夢!? 今のゆめだったの!!?」

明日地球が滅びても平気なぐらいの至福の寝顔でしたよ」

「このやろう! 小林!! 俺は楽しい『あいのりトーク』の後に、
      さゆりちゃんと食堂でチョコパフェ
だったんだぞ!!」

知りませんよそんなの。何ですか、その『あいのりトーク』って」

「……ああっ! なんかちょっと思い出したけど、俺なんか凄く
      夢の中でイヤな男になってた気がする

「夢は夢だし、大学にはそのさゆりちゃんとやらもいませんが、
     とりあえず今出発しないと電車に間に合いませんよ


・・・


(本日の授業終了)


「小林、俺達もそろそろオトナにならなきゃいけないんだよ……」

「いきなり顔色悪いですね、どうしたんですか」

「いつまでもだな、世の中をカクメーするだとか、次世代の
      旗手になるだとか、そんなコドモみたいな事ばっかり
      言ってたらダメなんだよ」

「そんな夢にやぶれたミュージシャンみたいな事言われても……」

「チクショー、なんだ、女が! たかだか
     チンコがあるかどうかだろ!?」

「またそういうアレか……」

「実はだな……」


かいつまんで言うと、慶治君は久々に会った知り合いの女の子に

声をかけようとしたら、男が一緒だった事に気づいて、

慌てて手を引っ込めてトンズラこいたのである。

いつの間にか遠くに行ってしまった女の子を見て、

慶治君はえらくヘコんでいるのだった。


ありゃあ多分サークル関係の男だぜ。俺はどこにも所属して
      ないし、授業だって週に一回しか合わないし、もうダメだよ……」

「なんか勝手に先輩が自己完結してる感が強いんですけど、でもまぁ
     確かに話す機会も全然無いとなると、それは諦めるべきですよね」

「惨めな事この上ない! 一体天はどれだけ俺を痛めつければ
      気が済むのだ!!

「まぁそりゃあ気持ちはわかりますけど」

「小林よ、所詮この世の中は一部の強い人間のみが幸福を
     享受できるのだ。
そして、我々は肉にされ、辛酸を舐める……」

「またいつものサヨク節ですか……」

「いや違うぞ小林。いつもの俺ならここで『カクメイだ!』と言う所だが、
      俺ももう大人になるのだ。革命するのは俺自身、といった所かな」

「そこだけ聞けば立派ですが、具体的にどうするつもりですか」

「極悪人になってやるうぅぅっ!!」

「また負け組が考える典型みたいな台詞を……」

人生は打算だ! 正直に生きるからダメなのだ。
      嘘を嘘で糊塗し、心にも無い台詞を吐き、他人の足を引っ張り、
      姑息に生きてこそ、初めて幸福の黒い花が開くのさ」

「……とりあえず聞きますけど、例えば先輩はどうするつもりですか?
     球技キライなのを我慢してテニスサークルにでも入りますか?

「いや、テニサーはダメだ……競争相手が強過ぎるからな。
      あくまで競争率が低い所で戦うのだ。いわば、
      弱いものイジメが出来る場所
が必要だな」

「弱いものイジメですか」

「ああ、イジメだ! 俺は今日から非道な男であるからして
     他人を食い物にする事ぐらいは朝飯前でなければならん」

「そんな嬉しそうな顔でイジメとか言う奴ぁ居ませんよ」

ボランティアサークルとか手ごろかな」

「まぁ、なんかわかる気がしますけども……でも、なんか
     ボランティアっていうと善人っぽいイメージですけどね」

「ハッハッハ! 小林よ、善人ヅラしてる奴ほど人が悪いんだよ。
      ホ○イトバンドを見よ! 善意の皮を被った悪徳とはあのことだ」

「とりあえず、ボランティアサークルでどういう悪徳をするつもりで?」

「そうだなぁ、例えば、大津波とか起こるとするだろ?

「また極端な話を……」

「家屋の類はことごとく倒壊浸水! 家族数名は行方知れず、
      ライフラインもままならず、住民は絶望と恐怖におののいている」

「……」

「小林……人間っていうのはな、こういう不安定な時に攻めると
      一撃で沈むんだよ

「先輩、今物凄い人間のカスみたいな事言ってますよね……」

今日から俺は非道な男であるからして、そういう事は一切
      感知しない! 孤独と寒さに震える地元の娘を励まし、癒し、
      愛を与える男……外側から見ればそういう風に見えるだろうよ」

被害者やらボランティア関係者が読んだら殺されるような事
     言ってますよね、今……」

「人間、殺意の一つや二つ抱かれて大きくなるもんなんだよ。
      そんなのは負け組のルサンチマンだ! 悔しかったら
      俺と同じ立場に立ってから文句を言う事だな!!」

「先輩! まだ何もしてないのにそんな偉そうな事言うもんじゃないですよ」

何がヒューマニズムだ! 結局、世の中ってのは打算なのだ。
      『セカチュー』とか『24時間テレビ』とかで泣いて、ホワイトバンドを
      つけるのが立派なヒューマニストなんだよ。
      ヘラヘラしてよ、適当に合わせる事ぐらいしか脳が無くて、
      そんな、ロボットみたいな人間が喜ばれるんだよ世の中は

「先輩、どっから縦読みすればいいんですか……」

TVタックル見ただけで政治通気取りか! マスゴミに踊らされ、
      脊髄反射みたいに安っぽく感動しやがって、
      お前らはたまごっちか!!




>そんなのは負け組のルサンチマンだ! 悔しかったら

>俺と同じ立場に立ってから文句を言う事だな!!

「先輩……何か、二重人格みたいですよ」

「ううっ! 何故だ……何故世の中は『あいのり』を見ている人間が
      エラいって事になっているのだ
……」

「うーん、こりゃいよいよ治療所行きだな……」

「……治療所? 何の事だ?」

「先輩、ちょっと来てください」

「なっ……ちょ、引っ張るな! どこへ連れて行くつもりだ!!」






■BOOK OFF■

「なんだ、どこかと思えばいつものブックオフじゃないか」

「ほい、先輩、これ読んで」

「漫画って気分じゃねぇよ」

「いいから!」

「これは……燃えよペンか」




(一時間後)




「俺が間違っていたッッッ!!」

「相変わらず意見がコロコロ変わる人だ……」

「いやぁー、島本先生にはまた教えられてしまったよ。
      やっぱり、正直に……アツく生きる男がかっこいいよな」

「ちょっとキキすぎたかもしれないな」

言ってみればこれは『逆境』なんだよな。これを乗り越えて
      強くなれ……と、きっとそういう事に違いないんだ」

「……」

「ヨォーシ、辛くても負けない! 頑張るぞ!!」

「あんたもたいがい、たまごっちだよ……」

下手な鉄砲も数打てば当たるのだ。100人、200人と
      当たっていけば、きっと道も開かれる」

「まぁそりゃ女の人は星の数ほど居ますけど、出会う機会なんて
     滅多に無いでしょう。どうするつもりで?」

「……とりあえず、ボランティアサークルじゃないか?」

「……なんでそうなるんですか」

「あと、『あいのり』も録画しておこう。CDTVもチェックだ」

「何かプロセスを間違えてしまったかな……」

「小林よ……世の中はちゃっかり生きたもの勝ちだ!

「えらくズレた方向に意欲出しちゃったよこの人は……」




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