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2006/5/4


5/3 AM8:00 東京都郊外の某アパート



「おい起きろ小林、そろそろ中野へ出発だ」

「はぁ?一体何の用事ですか」

18thCGアニメコンテストだよ! 言ってなかったっけ?」

「……それは、いつ決めた事ですか」

「3日の午前2時、俺が劇場版パトレイバーを見たあとに、かるーく
      ネットをしていたら、偶然発見してだな……」

「ぶはっ! メチャクチャ急な話じゃないですか!!

急な思いつきと、それを実行するフットワーク。これこそが
      東雲組クオリティではないか」

「そんなのあったんだ……」

「小林よ、これからはパーソナルアニメーションの時代なのだ。
      こういうイベントに顔を出しておけば、時代の最先端を
     ナマで体験できる
ということになる」

蛙男商会さんが、異例の地上波進出しましたしね」

「これはスゴいことだぞ小林。今俺達はアニメの流通に革命が
     今起こらんとしている時代に直面しているんだ

「先輩、演説ぶるのはいいですけど、そろそろ出ないと電車に
     乗り遅れますよ」

「ああ……そうだな。それじゃあ、出発!!」



・・・


5/3 PM0:00 中野ZERO


「さて開場だ。一体どんな作品が見られるのか……」

「特別上映でペイルコクーンとかTANK S.W.A.T.とかも見られる
     そうですよ」

「何! まさかそんなホットな作品をスクリーンで拝めるとは」

「審査員もイイですね。『デジスタ』とかからも来てますし、あと、
     岡田斗司夫とか」

「え! 岡田斗司夫!? 岡田斗司夫!?」

「先輩はホントに岡田斗司夫が好きですね」

「当たり前だ。俺にとってGAINAXのスタッフはみんな
     神様みたいなもん
だからな」

「でもアンタ、エヴァンゲリオンはコミックスと劇場版しか
     見てないでしょ?」

王立宇宙軍は見てるから大丈夫だよ」

「一体どういう基準だソレは……」

「とりあえず、12時半から18時までの長丁場だから、
      先にメシすませておくぞ」

「GWはアニメと特撮漬けですね」

「ちょっと世間的に見ればダメなGWの典型を地で行ってるが、
      俺としては中々充実してる感じだぞ」



・・・


――鑑賞終了





「いやいやいやいやいやいやいやいや……」



「「たまらんですな……」」




「もう、なんちゅうか……なんちゅうか……なんちゅうか!

「先輩、全然説明になってませんよ」

「日本人の技術者魂、見せてもらったよ……!」

「韓国の人も入選してたじゃないですか」

「ああ、『パパが必要なの』か。あれ見たら、もう歴史問題とか
      そっちのけで握手求めたくなる
よ」

「芸術に国境無し……ですね!」

いやもう実際スゲェのな。絵が凄い綺麗だっていうのもあれば、
      純粋にネタが良いやつもあり。個人製作独特の雰囲気と
      リベラルな製作環境の下でできた作品群。色々良いのが見られたよ」

「テレビとかでは滅多に見られませんよね。辛うじてNHK辺りが
     放送してるぐらいで」

「そりゃ、毎回デジスタぐらいでしか見られないものが何時間も
      ドバーッと押し寄せてくるんだから、これは値打ちもんですよ

「物販コーナーでもどっさり買い物してきましたね」

「いやー、庭師の予算の8割ぐらい使っちゃったよ

「相変わらず後先考えない消費しますね」

「でも、『これが時代の最先端の映像なんだ〜っ!』って思ったら、
      そりゃユキチさんだって出撃させますよ?

「そんな新しいオモチャを見つけた子供みたいな目をして……」

「俺もやりたいっ! パーソナルアニメやりたいっっ!!」

「だはっ! 早速感化されてる!!」

「小林よ、大学時代に一体何をやるべきかというので散々考え
      あぐねてきたが、やはり我々は将来の進路には、オタク関係の
      職業を眼前に据えておくべき
だと思うのだ」

「まぁ妥当といえば妥当なんですけど」

「やっぱり、腹の底からマグマみたいなのがグラグラ湧いてくるのは
      面白いアニメとか漫画とか見た時だろ。
      俺は、そういう感動をきっかけにしたいんだよ」

「で、具体的にはどういう仕事を?」

「シナリオとかいいな。企画なんかも面白そうだし」

「それでプロになろうってのは、つまり、極端な話をすれば
     将来は富野監督とかと同じ土俵に立とう
ってコトなんですよ?」

「だから、だ。俺は青春時代を真のオタク道に
      費やそう
と決意したのだ」

「真のオタク道……?」

「これからは、より進路を見据えたオタク活動をするべきなのだ。
      つまり、『オタク学入門』で述べられているオタク像に近づいて
      行こうというわけだな」

「ああ、もうオタクで食っていけるような人種ですか……」

竹熊先生ぐらいにでもなれりゃ御の字なんだけどな」

学術的にオタクをやろうって言うんですね?」

「俺だってイノセンス見た後に ( ゜д゜)こういう顔したくないんだよ。
      そこでちょっとした評論でもできたら、どれだけ素晴らしいかと
      いつも思うよ」

「映画の意味がわからんかった時ってホントに悔しいですよね……」

「これからの4年間、どう生活するかによって俺達がそのまま
      ずぶの素人で終わるか、それとも確かな審美眼を身に付けて
      出ることができるかって話ですよ……」

「なんだかよくわかりませんが、ようやく何か動き出してきましたね」

「第三世代の星に、俺はなるっ!」

「ああっ! またウカツな事を……大風呂敷の不良債権
     また増えるじゃないですか」

大風呂敷ではないっ! 断じて……」

「不良債権!」

「貴様ッ! 俺の志と大手銀行の頭痛のタネが同じだと言うのか!?」

「……本当にうまいメシ屋は看板すら掲げていないって、
     ばっちゃがいってました」

「何!? それじゃあ今の無し、ナシ! 撤回する!

「もう遅いわ!」




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